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ユウリ視点12

扉を開いた途端、あり得ない光景に驚き、僕の頭は一瞬真っ白になった。 次いで沸き上がってきたのは、激しい怒り。 足早に部室に踏み入り、暁のシャツのボタンを外そうとしている女子の手首を掴んだ。 「何をしてるのかな」 怒鳴り付けたい気持ちを押さえ、一葉に尋ねる 「あー、ユウリいらっしゃい。遅かったね」 画用紙に何やら絵を書いていた一葉が、笑顔で僕に答える。 「今ね、絵コンテ書いてるんだ。これがあると撮影時にイメージしやすいでしょ」 「いや、一葉じゃなくて、この娘のほう」 自分の作業内容を説明し始める一葉を制し、掴んだ手首を揺らして見せる。 「玲ちゃんはね…、ご奉仕中?」 僕と、僕に手首を持ち上げられ半ば腰を浮かした状態の友人の顔を見比べながら、ニヤニヤ顔で一葉が答える。 「か、一葉~。煽らないで、萌えは解るけど、私の体が持たないです」 「玲ちゃん、ここは頑張り所だよ。こんなのリアルで見られないから、みんなも期待してるし」 僕の質問には答えないまま、女子二人の意味不明な会話が続く。 「確かに、そこで悦に入ってる後輩らの為なら、私の手首の一本や二本くらい…」 「流石、玲たん。腐女子の鏡だぉ~」 「先輩、がんばれー」 僕らの様子を遠巻きに見ていた、女子達からも声援が上がる。 全く理解できない状況に、僕の苛立ちは募るが、女の子相手に喧嘩するわけにもいかない。 「つぅ、もうだめ。ユウリ君、手を放して頂けないでしょうか」 話しかけられて、改めて彼女の顔を見る。確か同級で部長の長谷川さんだったか。何故、彼女が暁に…。 「あの、痛いので放して欲しいです」 怒りのあまり無意識に、手首を握りしめていたらしい、痛みを訴えられ僕は手を放した。 「それで、君は暁に何をしようとしていたのかな」 一葉に聞くのは諦めて、長谷川さん本人に尋ねる。 「マッサージですよ。お化粧ノリを良くするために、肌の手入れをしてもらおうと思って」 聞けば、それなりの理由が返って来たので、僕は怒りを収める事にした。 お姫様役の暁はデコルテラインの空いた衣装を着せる予定なので、首回りも同様にマッサージをした方がいいらしく、その為ジャツが汚れないよう、ボタンを外そうとしていたようだ。 「だから、ユウリも撮影まではお肌に気をつけて、マッサージしてね」 そう言って、一葉がクリームを手渡してくる。 握らされたクリームを見ながら、僕はため息をついた。この、疲労感は何なんだろう。 「わかったよ一葉。そのかわり約束してほしいんだけど」 僕の言葉に一葉は笑顔で頷き、他の女子達は「萌え」とか「キュン死~」等の単語を呟きながら、ざわついていた。

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