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第27話

ぬくぬくぽかぽか、何か暖かいものに包まれている気配に俺は目を開いた。 鼻先15センチ足らずの距離に焦がれて止まない人の顔があった。 驚きに目をみはる俺に、蕩けるような笑顔で彼が呼び掛ける。 「おはよう、ジュリエット」 ?! 寝起きの頭で考える。 視線だけで周囲を窺えば、一葉を筆頭に華道部の女の子達が、俺とユウリの様子を注視している。 確か玲ちゃんに、マッサージをしてもらってて…寝ちゃったのか俺。 「おはようございます。ロ、ロミオさま?」 女の子達の期待の目に、そう返してみたものの、反応がない。 『あれ、間違えた?』俺の心の呟きが聞こえたのか、ユウリが俺の耳元に囁く。 「correct answer」 その瞬間、きゃーとゆうどよめきが起こり、女の子達が騒ぎ始めた でも俺は、耳たぶに触れたユウリの吐息に、くすぐったさとは違う、ぞわりとした感覚を覚え、それどころではなかった。 「てゆうか、何してんだよ」 近すぎるユウリとの距離に内心ドキドキしながらも、平静を装って俺はじっとしていた。とゆうのも、俺の首筋にユウリが暖めた濡れタオルを押し当てていたからだ。 「マッサージクリーム拭き取ってるんだ。もうちょっと我慢して」 「ああ、そういえば顔にクリーム塗られたっけ。でも何でユウリが?」 「長谷川さんじゃなくて、ガッカリした。代わってもらう?」 寝落ち前の記憶から、ただ疑問に思って聞いただけなのだが、ユウリの機嫌を損ねたらしい。 「ロミオさまにお任せします」 おどけて言ってみたが、ユウリは答えず大きなため息をつくと、手にしたタオルを取り替える。 「暁、目閉じて」 言われるまま目を閉じると、頬に触れる暖かい布越しにユウリの手のひらを感じた。肌をゴシゴシ擦るような荒さは一切なく、優しく優しく俺の顔にユウリは触れている。 ユウリにこんな風に触れて貰えるなんて、嬉しい。 訳のわからない変態紙芝居に巻き込みやがってと、一葉に腹を立てていたけど、謝ります。 グッジョブ、一葉! でも、気を付けないと変なスイッチ入っちゃうかも、我慢だ、マイ息子(サン)。 タオルの暖かさとは異なる、ユウリの熱─触れ合いそうな距離だから解る─が、俺の体に伝わってくるからだ。 そんな、変態じみた事を考えていた俺に、現実は更なる試練を用意していた。 化粧水を含ませたコットンを渡された俺は、教えられたように、トントンと肌に馴染ませる。コットンの冷たさのお陰で、体の熱も収まり安堵した俺に、ユウリが告げる。 「暁のマッサージは僕がするから、いいよね?」 駄目と言えるはずもなく、頷くしかなかった俺は、一晩中悶々としていた。 ユウリに触れられている間、どうやって気を逸らせばいいのだろうかと…

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