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第29話

「せっかくだから、ワルツのシーンも入れちゃおう」 そんな一葉の思い付きにより、舞踏会のシーンが付け加えられる事になった。 舞踏会というからには、俺とユウリだけでは成り立たないから華道部の女の子達も演じる事になった。 といわけで、ユウリ指導のもと俺は華道部の女子達と一緒に簡単なステップを教わっている。 「女性役は、ステップを気にするよりパートナーを信頼して体を預ける気持ちが大事だよ」 足運びを気にしすぎて、動きが固くなる俺たちに、ユウリはアドバイスをくれる。 「男性役は少し大変かもしれないけど、パートナーが安心して身体を委ね、彼女が華麗なダンスを披露できるよう導いてあげるんだよ」 だから各々がステップを踏む事に集中していたのでは、いつまでたってもぎこちないダンスしかできないとユウリは注意してくれた。 「暁、顔上げて」 ユウリに手を取られ、本日2曲目のワルツを俺は踊っていた。 背筋を伸ばして顔を上げれば、ユウリの顔が間近に迫る。これまで気づかなかったが、いつの間にか俺とユウリの身長差が縮んでいたようだ。 「ユウリ、背延びたよな。今、何㎝あるの」 練習初日、向かい合った近い位置からユウリに見つめられ、真っ赤になってしまった俺は、なるべくユウリと視線を合わさないよう気をつけていた。 ただでさえ、腐女子達の妄想のネタになっているのに、これ以上醜態を晒したくない。それに俺は仕方ないとしても、ユウリまでそっちの人だと勘違いされたくなかったからだ。 「測ってないから解らないけど、確かに制服のズボンは作り直したよ」 「ズボン…」 思わず下を向いて、お互いの腰の高さを見比べた俺は、愕然とする。 身長差はないのに、腰の高さが異なっているなんて… 日本人体型の自分とは違うユウリの体型に、彼はハーフなんだと再認識する俺であった。 ※ ※ ※ 「脱げ」 「イヤだ」 迫ってくる男の腕を避け、後ずさりする俺の背中が壁にあたった。 「もう時間がないんだから、さっさと脱げよ」 壁ドン状態で囲い困れ、苛立った声で言い渡される。 「あいつは素直に脱いでるぞ」 その言葉に俺は慌てて男の肩越しにユウリの姿を探した。 「ユウリ…」 ユウリも俺と同じように服を脱げと迫られているのだが、俺とは違い相手は数人の女子だ。しかも、ユウリは戸惑うことなく制服を脱いで、女の子達に渡している。 「ああ、良かったTシャツ着てる」 安堵したのも束の間、ユウリはベルトに手を掛ける。 嘘だろ、ズボンも脱ぐつもりか? 「脱いじゃ駄目だ。ユウリ~」

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