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第31話
学園祭当日、俺とユウリはお互いの休憩時間を合わせて、校内を回っていた。
「たこ焼き、アメリカンドッグ、かき氷にわたあめ…。祭りメニューまんまだな」
各クラスの模擬店を回っては買い食いしつつ、お化け屋敷やら迷路等のアトラクション(?)を冷やかしてみる。
「おっ、良い匂いすると思ったら、焼きそばじゃん。ユウリ食べてかない?」
オーダーを済ませ番号札を貰い、丁度空いていた窓側の席にユウリと並んで座る。普段は黒板に向いて並べられている机が、カフェのカウンター風に窓に向かって座れるように配置されていた。
3階の窓から見える景色は、2階の自分のクラスから見るのとは違って見えた。
来年はこの景色をユウリと同じクラスで見れるといいなと思いながら眺める。
「おまたせしました。焼きそば大盛りと、こっちはサービスね」
そう声を掛けつつカフェエプロンを着た男性が、俺とユウリの前に焼きそばの皿と、串に刺さったフランクフルト二本の入った紙コップを置いた。
「えっ、サービスって?」
驚いて運んでく来てれた人の顔を見上げると、それは松下だった。
「松下さんのクラスだったんですね」
焼きそばの香りにつられて入っただけで、俺もユウリもそこが松下のクラスとは知らなかった。
「何だ、知ってて来てくれたんじゃないの?じゃー、サービス取り消し」
笑いながら松下が紙コップを取り上げる素振りをするので、俺もわざとらしく非難してみせる。
「可愛い後輩に、ソーセージの1本も恵んでくれないなんて、先輩ちっさいって言われません?」
「ちっさいっとは何だ、そんな憎まれ口きく奴は~」
言いながら松下は俺の両こめかみを握り拳でグリグリしてくる。
「ちょっ、止めて。ギブギブ」
大して痛くはないが、髪がグシャグシャになるのが嫌で、俺は松下の腕を叩いて訴える。そんな俺と松下の様子を見ていたユウリが、助けに入ってくれた。
「松下さん。他の方々は忙しそうですよ」
周囲を見回せば、満席状態で松下以外のメンバーは、焼きそばを焼いたり給仕をしたりと動き回っている。
そんな中、俺にじゃれついている松下は、サボっているに等しいと言えるだろう。
「ハイハイ、わかりました。ゆっくりお召し上がりください。味の保証はしないけどな」
「そこは保証すべきでしょ」
そう突っ込んだ俺に、何やら怪しい笑みを残し、松下は離れていった。
焼きそばは美味しそうな匂いを放っていたが、松下の言葉が気になった。
「大丈夫かな?」
ユウリが焼きそばを食べ始めるのをみて、俺も恐る恐る箸を付ける。
「普通に美味しいよ」
一口食べて、ユウリはそう言ったけれど、眉間にシワがよっているのは、何故だろう。不思議に思いながら俺も、焼きそばを頬張ったのである。
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