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第32話

焼きそばを食べ終えた俺とユウリは、華道部の部室へ向かう事にした。休憩時間も残り30分程になっていたし、この後クラスに戻れば学園祭終了時刻まで自由時間は取れない。 昼を過ぎた辺りから、在校生以外の一般訪問客が増えて来たようで、生徒の親御さんらしきご夫婦や家族連れ、卒業生らしき人。同い年ぐらいの私服姿の子は他校生か来年うちを受験しようと考えている中学生あたりだろう。 呼び込みの声や、お互いの連れとおしゃべりをしながら見学する人たちの声で、ざわざわと賑やかな音で満ちている。 普段とは異なる様子の廊下を見回しながら歩いていた俺は、ふと気がついた。 『見られてる?』 皆、一瞬ハッと驚いたような表情を見せ、すれ違った後も振り返って見てくる。 もちろんすれ違う人全員がそうではないのだが、あからさまに見てくるのは、決まって複数人連れの女の子達だ。 まぁ、他校の学園祭に女の子が一人で見学に来る方が珍しいのだろうが、2、3人もしくは4、5人の女の子達とすれ違う度に、ギョッとした表情をされ、通りすぎればひそひそと何か言われている様子が気になる。 「なぁ、ユウリ。何か俺たち見られてる気しない?」 隣を歩くユウリに聞いてみるが「そう?」と全く気にした様子もない。 気のせいだろうか?モヤっとする俺の疑問に答えをくれたのは、中学生ぐらいの女の子3人組の会話だった。 「あれ、あの人じゃない」 「やっぱ、そうだよね」 「ハーフなのかな、すごいかっこいいね」 そうか、ユウリを見てたのか、誰がみてもイケメンだもんな。 疑問が解決すると同時に、自分が見られていると勘違いしていた事が恥ずかしくて顔が熱くなる。 「暁、顔が赤いよ。もしかして熱ある?」 そう言って俺の頬に触れてくるユウリの冷たい指先が気持ちいい。 「んー大丈夫。人が多いからかな、ちょっと暑いだけ」 誤魔化す俺に「まさか熱中症じゃ」とユウリが心配し始めたので、慌てて俺は先を促した。 「大丈夫だし。それより一葉待ってるから、早く行こうぜ」 「それならいいけど、ちょっと待って暁」 足を速めた俺の後をユウリも追い掛けるようにしてついてくる。 だから俺は、俺達の様子を遠巻きに見ていた女の子達の話を聞きそびれてしまったんだ。 「ねぇ、やっぱり隣にいた子だよ」 「普段もあんなに可愛いなんて」 「ホントに男の子だったんだね」

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