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第34話

Endの文字がスクリーンに表示されると、室内が明るくなる。 ロールスクリーンが脇に片付けられ、その後ろに控えていたらしい華道部の子達が客を出口へ誘導する。 撮影した写真をパワポのスライドショーで紙芝居風に観せるとゆう手法は、特別な技術も要らず手軽に作成できる。その代わり絵やストーリーに魅力がなければ、ただ他人のアルバムを強制的にめくらされている気分にしかならないだろう。 「まぁ、面白かった…かな」 隣のユウリにようやく聞こえる位の小さい声で俺は呟いた。自分が出ている作品を良かったと誉めるのは気恥ずかしいし、鑑賞を終えたお客さんの反応も気になったからだ。 「そうだね。一週間足らずでここまで良く仕上げられたよね」 ずっと腕組みしてスクリーンを見ていたユウリも、感心したように頷いている。 『一葉って結構文才あったんだな、腐ってるけど…』 そんな風に思いつつ、出口に目をやると、そこに一葉の姿があった。出口に向かうお客さん達が何故か一葉の前で立ち止まるので、なかなか教室の外に出られない。 「何かやってるのか?」 不思議に思ってユウリと顔を見合わすが、ユウリも首を振るだけだ。 ゆっくりと進む列に並び、少しづつ出口に近づいて行くと、一葉がノートパソコン抱えているのが見えた。どうやら、その画面を観ようと立ち止まる人達がいるせいで、出口が混雑しているようだ。 「すみません、ちょっと通して下さい」 見渡せば周囲は女の子ばかり。俺とユウリは早々に退散した方がいいだろうと、詫びを入れながら出口に向かったのだけれど。 「暁、ユウリ❗来てくれたんだ」 不意に大きな声で呼び止められ、立ち止まってしまった。 声の方に目をやれば、一葉がニコニコ顔で手を振っている。 「お、おぅ」 無視するわけにもいかず、手を上げて返事をしたとたん、周りがざわつき始める。 「ねぇ、彼じゃない」 「リアルにイケメンだ」 「あれ、隣にいるのって」 いくつもの視線が俺とユウリに注がれる。 「あの~、ジュリエットさんですよね?」 「えっ、何でわかったの?」 いきなりの身バレに驚く俺に、声をかけた女の子は?と言う顔で指を差す。 その先に目をやった俺は、一葉の首を絞めてやりたくなった。 一葉の抱えるパソコン画面には、ワルツの練習風景や衣装合わせの様子、撮影の為にポーズを取っているユウリの姿が映し出されている。30秒程のメイキング映像のようだが、その中に素顔の俺がメイクを施されていく様子があったのだ。 「ジュリエット、綺麗でしたよ。握手して貰えますか」 「あ、はい」 断れずに握手をすれば、私も私もとあっという間に囲まれてしまった。 ユウリを振り替えってみれば同じように、取り囲まれて握手やら写メをねだられている。 どうすりゃいいんだと一葉を睨めば、顔の前で手を合わせてウインクしやがった。 仕方なく、しばらく握手や写メを撮ったりしていたのだけれど、ポケットでスマホのアラームが鳴ったのを期に、俺はその場を逃げ出すことにした。 「あー、俺もう行かないと、まずい。ユウリはどうする?」 ユウリに声を掛ける。 「僕は、まだ時間あるから大丈夫」 「ホントに無理してない?」 周りの女の子達には聞こえないよう、ユウリの耳元で囁いた。 すると、きゃーっとゆう声が上がったが、俺は無視してユウリの様子を確かめる。 一葉に気を使っているんだったら、無理をする必要はない。 「無理してないよ。実は、ちょっと一葉に話があって」 「話?一葉に……」 「うん」 そう言ってユウリは俯く。 何を話すの? 聞きたいけど、聞けない。 今夜は後夜祭だ。告白して、ダンスに誘うとか…… 「わかった。じゃあ、俺は先に戻るね」 引き留めようとする女の子達に謝りながら、俺はその場を後にした。 心臓を鷲掴みにされたような痛みを抱えて。

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