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第40話 ー終章2ー
昔ながらの商店街を抜け、いかにもクリスマス商戦真っ只中のショッピングモールに辿り付く。
日本に来て数年、幾つかの季節を繰返し、風習や考え方の違いにカルチャーショックを受けて来たけれど、異文化さえも取り込んでお祭りの一つにしてしまう、日本人の寛容さには感心するばかりだ。
「してる事は、変わりないんだよな」
クリスマスを祝うため、街を彩り家族や大切な人へプレゼントを贈る。まぁ、家族愛より恋人と過ごすイベントになっているのは、そもそも宗教の教えありきからではないからだろう。
「暁、少し待ってて貰える?」
モール内を見て回り、少し遅めのランチを取る。食後のコーヒーを頼んでから、僕は暁に告げる。
「そこの時計店まで行ってくる」
「隣の隣の店だろ、俺も一緒に行くし」
そう言って立ち上がろうとする暁を、すぐに戻るからとひき止める。
「修理に出したのをを引き取るだけだから、暁はコーヒー飲んでて」
頷いた暁にすぐ戻ると言い置いて、店を出た僕は10メートルにも満たない距離を急いだ。受けとるだけと言うのは嘘ではないが、実際は暁へのクリスマスプレゼントだ。
数ヵ月前に注文していたのだが、特注品のため仕上がりがぎりぎりになってしまった。昨日店舗に到着したと連絡を受けた時は、マークに取りに行って貰おうかとも考えたが、今日ここに来る事は決まっていたし、暁へのプレゼントだから仕上がりもきちんと確認したかった。
「イメージ通りじゃなかったら、どうしよう。これから違うもの探さないとだよな」
そんな不安を覚えつつ、時計店の店員に来店の目的を伝える。
若い女性店員がカウンターの奥へ消えるのと入れ違いに、少し年配の男性が現れる
「グレイ様、ご来店お待ちしておりました」
店長だというその男性から名刺を受け取り、手間を掛けた事に礼を言う。
本来なら半年以上掛かる行程を、こちらの都合で短縮してもらったからだ。
「いえ、お役に立てたのであれば光栄です。早速ですが、こちらが承ったお品になります。ご確認頂けますでしょうか」
そう言って店長がベルベット敷きの台に載せたのは、二つの品だ。
どちらも全く同じ作りだが、シルバーの色味が微妙に異なっている。それぞれの表と裏の細工を確認した僕は、満足な出来に安堵する。
「二つとも素晴らしい出来です。すみませんが、こちらだけラッピングして頂けますか」
「承知しました」
女性店員がラッピングをしている間に、店長と会計を済ませる。大した時間は掛かっていないだろうが、待たせている暁が気になった。
「ありがとうございました。良いクリスマスを」
商品を受け取った僕は、小走りで暁の元へ戻った。
いい加減、暁に伝えなければならない。年が明けたら英国へ帰る事を…。
「これを渡して、暁にちゃんと気持ちを伝えるんだ」
手にした紙バッグをそっと撫でる。
このときの僕は、きっとクリスマスに浮かれていたんだと思う。想いを込めたプレゼントを渡し、自分の気持ちを伝えさえすれば、暁は喜んでくれると勝手に思い込んでいたんだ。
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