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第1話

「はっ? お前何言ってんの」 明日の三者面談を控え、何となくユウリに今後の進路を聞いた俺は、その答えに呆然とした。 「もともと決まってたんだ。大学はイギリスでって……」 俺の視線を避けるように、俯いたユウリのうなじの白さに目を奪われる。 夏の制服に衣替えをしたばかりの今週、色素の薄いユウリの栗毛が白いシャツに映る。 うつ伏せの状態から、俺は勢いよく飛び起きた。 俺が寝ているベッドを背もたれにし、体育座りで膝に頭を乗せた格好のユウリを見下ろす。 「また、あっちの…祖父(じい)さんの言い付けか?」 俺の言葉に形のいい頭が肯定の合図に揺れる。 「そっか……」 沈黙が部屋の空気を重くする。 いつかなるんじゃないか、とは思っていた。 俺は、ユウリの生い立ちを知っていたから。 だからと言って納得出来る事ではないんだ。 ずっと一緒にいたい、この想いが成就する事は叶わないと思っていても。 それでも、側にいたいと、側にいると、あの日決めたから。 「じゃあ、今年はいろんな事して、思い出作らなきゃな…」 つい、そんな事を口走ってしまう。 これじゃ、もう二度と会えなくなるみたいじゃないか。 「うん。そうだね」 顔を上げたユウリは俺の顔を見て、にっこり笑った。 儚げなその笑顔に、俺の胸は締め付けられる。 友人として俺の事を信頼しているユウリ。 だが、俺はユウリに対して友人以上の、想いを寄せている。 想い…そんな陳腐な言葉では表せない、俺の全身全霊、全てがユウリを求めている。 邪な感情で。 清らかなその心も身体も、食らいつくし蹂躙したいと、いつから思うようになったのか? 気が付けばユウリから目が離せず、長い夜をユウリを想って咽び泣いた。 熱くなって脈打つ己の性を宥めるため、何度ユウリを妄想の中で犯しただろうか。 この気持ちは誰にも知られてはいけない。 知られれば、ユウリの側に居られなくなると、日々緊張と恐怖に耐えた。 そんな努力も虚しく、ユウリは俺の側から居なくなってしまうのだ。

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