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第2話

「で、一葉(かずは)お前はどうなんだ?」 「は? どうって何が」 明けた月曜日、図書委員の当番で居残りのユウリを待ちつつ、幼なじみの袴田 一葉(一応JK)に、俺は絡んでいた。 「だから、進路とかさ...」 「って事は、ユウリには確認済みって事ね」 一葉と俺は、家が隣という事もあり、親同士も仲がいい。 ユウリ以上に付き合いが長いうえ、家族同然の付き合いをしてきたから、唯一俺の本音を打ち明けられる相手だったりする。 「んー、まぁな」 「それで?イギリスに帰るって言われて落ち込んでるんだ」 「なっ、お前知ってたのか❗」 「まぁね。あんたと違って、ユウリとは隠し事のない友情を育んでるからね~」 一葉の進路など全く興味もなく、ただ話の取っ掛かり程度に聞いただけだと、彼女も心得ている。 心得ているどころか、そんな俺の気持ちを逆撫でするような言葉を選んで逆襲して来るからたちが悪い。 「ああ、そうだな。ユウリはお前には何でも話すもんな…」 また、一つ暗くなる理由が増える。 ユウリは、一葉の事が好きだ。 確かに一葉は、可愛い。 ご近所のアイドルって路線でデビュー出来るほどには、顔立ちもスタイルもよく、さっぱりした性格で、子供の頃から男女区別なく好かれる奴だった。 とは言え、身近に…、一番近くにいた俺からすると、実は本当に打ち解けてしまうとおっさんにしか思えないとゆう残念な性質の持ち主なんだ。 そもそも、こいつ真性の腐女子だし。 何度、ユウリにこいつの本性をばらしたいと思ったことか。 純粋なユウリの目には、一葉が花壇の花を見つめれば、花びらが散ってしまう儚さを憂えていると思うし、 ――実際は、花に群がるアブラムシを雄に見立て、その夏の同人誌の小説を考えていた―― 本当に稀に俺とユウリが言い合いをすれば、俺とユウリの友情を守らんと目を潤ませて仲裁に入る、 ――実は、俺とユウリをそうゆう関係に見立ててBLを書いてるから、歓喜のあまりにうるうるしてる―― そんな純粋な子だとユウリは思っているようだ。 そんなユウリの一葉に対する態度を見れば、他の女子には見せない表情を見せるし、何よりくつろいでいるから、俺は何も言えない。 ただでさえその生い立ちから回りに気を使ってばかりのユウリが、気安く接する事が出来るのは、一葉と俺だけだと解っていたから。

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