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ユウリ視点 2

僕のイメージを問えば、恐らく物静で優しい性格、協調性のある良い子だと言われるだろう。 ハーフのくせに引っ込み思案で暗い、陰険で高慢な外人とゆう見方もあるようだ。 前者は自分で、そう思われるよう作ったキャラクターだけど、後者については僕個人への不満なのか、他人種への嫌悪なのか判断に苦しむところだ。 肯定や否定の感情はもちろん、憧れと妬みの入り交じった感情を向けられる事に慣れきった僕にとって、兎小屋の中で優劣を争うような日本の学生生活は平穏に過ぎると言っても良かった。 そもそも僕が日本に住む事になったのは、病気の母に付き添う為であり一時的な滞在の予定だった。 数ヶ月の事だし、わざわざ日本の中学に転入する必要はなかったのだけれど、将来日本人に関わる際に役に立つ事もあるかも知れないと、母の病院に近い中学に通うことにした。 偶然が重なっただけの出会い。 それなのに、初めて会った瞬間から、彼は僕にとって特別な人になった。 母の容態も安定し、当初の予定通り帰国する時期が来ても、僕は日本に留まった。 以来、彼と過ごす為、父にも祖父にも我が儘を言って日本に居座っているが、それが許されるのもあと二年足らずの期間だ。 彼の待つ、2年5組の教室に辿り着く。 二つある出入口、教卓側の扉に手を掛けた途端、反対側の扉が開き女の子が飛び出して来る。 「一葉?」 振り返りもせずうしろ手に扉を閉めた彼女は、昇降口へと走り去る。 僕がいることには全く気付いた様子もない。 「何を慌ててるんだろう...」 その顔が、赤かった気がする。 熱でもあるんだろうか? まぁ、あれだけ走れれば、具合が悪いって事はないか。 気になりつつも目の前の扉を開く。 中にいたのは教壇に背を向けて座る男子が一人。 彼の向かいの椅子が引かれたままなので、一葉はそこに座っていたんだろう。 僕が入ってきた事に気付かない彼に、静かに近付く。 一葉を気にしているのか、背後に迫っても全く気付いてくれない。 不意にいたずら心が芽生えた。 「だーれ、だぁ?」 後ろから彼に目隠しして、形のいい耳に吐息をふきかける。 彼は一瞬身をすくめたけれど、すぐに僕だと解ったようだ。 「何で質問してる方が、尋ね気味なの?」 「ん~。こうゆう遊びしたことないから、あってるかなって」 「大丈夫、あってるよ。ユウリ」 そう答えながら彼は僕の両手首を掴んで引っ張った。 自然と彼の背中に抱き付くような姿勢になる。 バクバクと速くなる鼓動が、この温もりを誰にも渡したくないと訴え始める。 例えそれが、彼の想い人であっても.... 一葉の事を尋ねてみると、友人に呼び出されて帰ったとの返事。 でも彼の口調が重い気がして、不安になった僕はつい聞いてしまったんだ。 「もしかして、一葉に告白とかしてたりしない?」 一瞬の間のあと、否定した彼は僕の頭を撫でてくる。 解ってる。 彼が一葉に告白する事はないんだ。 僕が一葉を好きだと、彼は思っているから。 彼の首に、しがみついて謝る。 「ごめんね。好きだから....(許して、(あきら))」 漏れそうになった謝罪の言葉を飲み込む。 あと少し、高校を卒業するまでの間、僕だけの暁でいて欲しいから....。 僕は嘘をつき続ける。 真実が明らかになった時、彼に嫌われる事になったとしても。

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