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第5話

7月も初旬になると、それまでの暑さがお試しだったように感じられる。 額どころか頭全体からこぼれ落ちる汗を拭っても仕方ないと、とっくに諦めた俺は水分補給だけに気を付けている。 ユウリと同じクラブに入る予定だったのに、元々人気のクラブだったのか、ユウリが入部するからと人気になったのか、よくわからないまま抽選になってしまった。 ユウリが見事当たりを引き当てた直後、引きの悪い俺は外れを引いてしまった。 もともと、本が好きなわけでもなく、ユウリが希望していたというだけで読書クラブ(図書委員兼任)になってもいいかと思っていただけだから、ユウリと一緒じゃなければ後はどのクラブでも良かった。 校庭とは別に校舎の建物と建物の間に出来たスペースに、園芸クラブに割り当てられ土地がある。 これまでは各建物毎に色を決めた花を植え、秋のイベント時に競い合っていたのだが、今年からは部員毎に区画を割り当て好きな植物を植える事になっていた。 花を植えたり、いづれ実をつける果樹を育てたり、目に優しい緑の葉を話し相手にしたりと、それぞれが好きなように園芸を楽しんでいる。 5月下旬に苗を植え付けてから、下校するまでの間に割り当てられた区画の手入れをするのが俺の日課になっていた。 水をやり、弦の伸びを計り、草をむしり害虫を駆除する。 大事に大事に育てた。 ユウリに友情以上を注ぐことが出来ない分、余った愛情を注ぎ込むように、世話を焼いた。 やがてそれに答えるように、少しずつ膨らんできた実が可愛いくて愛しくて、暑いのも手が掛かる事も苦にならなくなっていた。 そもそも、これを育てているのも、ユウリを喜ばせたいと思ったからなんだけど。 「暁、少し休んだほうがいいよ」 畑の脇、校舎に立て掛けたよしずの陰からユウリが声をかける。 俺に割り当てられたのは、元は黄色の花が植えられていた花壇で、今はその二区画分を畑として使用している。 夏の日差しを受けて、青々とした葉っぱが、先をゆく弦と一緒に太陽を追いかけている。 まるで光輝くユウリを追い掛ける俺のようで、一層可愛いと思うのだけれど、このスイカのように俺の気持ちが実ることはあり得ないし、どんなに手を伸ばしても届くことはないと解っている。 「暁、聞いてる?」 いつの間にかよしずの陰から出てきたユウリが、隣にしゃがみこんでいる。 「熱中症で暁が倒れても、僕はお姫様抱っこ出来ないんだから....」 言いながら俺の腕を引っ張って立ち上がらせる。 「何だよ、お姫様抱っこて…」 よしずの陰に引っ張り込まれつつ、俺は赤面する。 「ほら、顔赤いよ。日にあたり過ぎなんだよ」 心配するユウリには申しわけなかったけれど、俺の顔が赤いのは日にあたり過ぎたせいではなく、ユウリを抱っこしたところを想像したからだ。 抱き上げたユウリを優しくベッドに下ろす。 ユウリを怖がらせないよう気をつけながら、逃げられないよう覆い被さる。 興奮して少し濃くなったユウリの瞳を覗き込み、俺はゆっくりと唇を近づけてゆく。 少し驚いた表情を見せたユウリも、すぐに受け入れて目を閉じる。 閉じた瞼の震えが長いまつげを揺らすのを、俺は愛しく想いながら優しく深くユウリに口づける。 ユウリが漏らす吐息に煽られながら、俺の手は華奢な体をはいまわり、やがてユウリの秘めた場所へ侵入しようと....

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