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第6話
「暁❗ ねえ聞こえてる」
ユウリのそれに手を伸ばした瞬間、肩を揺さぶられ我にかえる。
「えっ どうしたユウリ?」
不安そうに俺を見上げるユウリに慌てて、返事をする。
「どうしたじゃないよ」
頭一つ分、俺より背の低いユウリが俺の胸元で、怒りの声を上げている。
「無理しないで❗熱中症になったらどうするの」
妄想の中のユウリも良かったが、俺を見上げてぷりぷりと怒っている様も可愛くて、にやけそうになるけれど、真面目な顔を取り繕う。
邪な妄想をしていただけなのに、ユウリを心配させてしまった罪悪感と、ユウリが友人として俺の事を気にしてくれる事に対して、ちゃんとした態度を取らなければいけないと自制する。
「大丈夫、心配かけてごめん。ちょっと、考え事をしてただけだから」
ユウリの頭にポンポンと軽く触れてから、よしずの陰で休憩するために置いてあったキャンプ用のチェアに腰かける。
「ならいいけど……、あっ」
そういいつつも俺の顔色を伺っているユウリを引き寄せる。
よろけるユウリを抱き止めて、そのまま膝の上に座らせる。
「ユウリの方がバテてるんじゃない?」
「僕は何もしてないよ」
俺に抱き抱えられた格好でも、臆することなくユウリは答える。
ジージージーと、蝉の鳴き声がうるさく響く。
それとは別に耳元でドクドクと、鳴きわめいているのは何だろう。
ユウリの顔が近付く度に、その唇に吸い付きたくなる。
それを堪えるのに、俺の忍耐力を総動員しなければならない程だ。
ユウリを想う度に疼く胸の痛みが、鼓動を速くし身体中の血管を脈打たせる。
「なぁ、ユウリ」
「ん、何?」
俺の呼び掛けに答えながら、ユウリの白く細い指が俺の頬にのびる。
「暁、やっぱり熱いよ。本当に大丈夫なの?」
いや、だからそれがダメなんだって。
お前が触れるせいなんだよ。
ほら、また脈が速くなった。
ドクドクって....。
ああ、耳元で煩く鳴いてたのは、俺の血潮だったんだな。
ユウリに触れられる喜びに、身体が反応している。
俺の心も身体も全て、ユウリに捧げられているんだから。
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