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第10話
学校近くの定食屋で昼食を済ませ、俺はユウリと一緒に図書室に来ていた。
この時期、花壇への水撒きは朝夕する必要があるのだが、夕方の水撒きは校務員さんがしてくれるため、園芸部の当番は午前中だけだった。
ユウリの作業が終わるまで校内で時間を潰そうと思っていた俺に、ユウリが図書室に来ないかと誘ってくれたのだ。
「先輩やっと帰ってきた」
図書室に入るや女の子がユウリに近寄って来た。
「あれ、お客様ですか?」
ユウリの後に続いて入ってきた俺を見て尋ねる。
「うん、もてなしてくれる?」
「あはっ、私で良ければ」
初対面の俺の冗談に笑って答えてくれた。なかなか感じのいい娘 だと俺は思った。
「お昼の約束してたお友だちですか」
「ああ、そうだよ」
ユウリが答える。
「なんだ、女の人じゃなかったんですね。じゃぁ、私が一緒でも良かったじゃないですかぁ」
何やらユウリに文句を言い出した彼女に、恐る恐る聞いてみる。
「もしかして、お昼一人だった?」
「そうなんですよ。ユウリ先輩ってば、かわいい後輩をおいてけぼりで、さっさとお昼に行っちゃたんですよ。ひどいと思いません?」
そう言うと彼女は、腰に手をあてユウリを睨む真似をする。わざとらしく怒って見せるひょうきんさが俺のツボに嵌まった。
「ああ、ごめんな。俺が二人っきりじゃないと嫌だって、駄々こねて付き合ってもらったんだよ」
「独占反対!本日只今から、ユウリ先輩独占禁止法を施行しま~す」
「ど?独占禁止法って、あはは。面白い君マジで面白すぎるから」
思わず吹き出した俺につられて彼女も笑い出した。
二人して涙を流して笑いこけてたら、白けた視線を向けたユウリが厳かに告げる。
「職務専念義務違反を申し立てても宜しいでしょうか?」
顔を見合わせた俺と彼女が、更に爆笑したのは仕方ないことだった。
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