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堅物教授vsドン・ファン学生 2

 こちらの目線よりはるかに高い、百八十五センチの長身に見下ろされると、標準サイズの私はそれだけでバカにされた気分になるが、それでも不快感を面に出さないよう努めながら彼の言葉に応じた。 「その必要はない。昼食は講義の……」 「あー、俺もう、腹ぺっこぺこ。今日は何にしようかな、B定食のおかず、唐揚げだといいな」 「だから必要な……」 「おっと、早く行かないと座る席なくなりますよ、急ぎましょう」  聞いてない。まったく聞いていない。  結城は私の袖をつかむと、校舎から学生会館へと向かう通路を一目散に駆け出した。 「なっ、何をする!」  その結果、しかめ面をしたまま、私は食堂のパイプ椅子に腰掛け、向かい合わせに座った結城がB定食の唐揚げにかぶりつくのを眺める羽目になった。  なぜ、私はここにおとなしく座っているのか。一端の大学教授ともあろう者がたった一人の学生に振り回されてどうする。  こんなふうに自分で紹介するのもおこがましいが、某有名大学を優秀な成績で卒業した私は神明大の大学院を進学先に選び、研究室助手から准教授を経て、理工学部生物学科の教授へと異例のスピードで昇進した。  進学のために上京して二十年余り経つが、順調にエリートコースを歩んできた、その点に於いては成功した人生といえるだろう。

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