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堅物教授vsドン・ファン学生 3
理系学部では三回生からいずれかの研究室に所属するよう定められており、それは二回生の終わり頃に希望を募って、人数調整をした上で決定する。
学科毎に十余りの研究室があるのだが、伝統がある、教授の実績や人柄が評価されているといった理由の他に、出身OBとの連携などで企業とのパイプが太く、就職に有利なため人気を集めているところや、そうでないところなど、その実情は様々。
そんな中にあって私の植物遺伝学研究室はまずまずの人気で、今年度は六名もの三回生が入室を志願してきた。
全員男子学生であるその六人が──ただし、入室早々交通事故に遭って入院してしまった者が一人いるため、現在顔を合わせるのは五人である──研究室生として加わったのが四月の初めで、五月に入ってからはようやく彼らにも慣れ親しむようになったが、どういうわけか何かにつけて絡んでくる結城のお蔭で、これまで平穏だった私の生活リズムは狂いっぱなしになってしまった。
バカバカしい、こんなヤツの相手をしている暇はないはずだと自問自答を繰り広げながらも、席を立つ気にはなれずにぼんやりとしていると、結城の箸を持つ手が止まった。
「本当に何も食べなくていいんですか」
「……昼食は講義の前に済ませたと、さっきから何度も言っただろう」
鼻白んだ私は胸のポケットからタバコを取り出そうとしてやめた。食堂は終日禁煙だった、イライラが一層募る。
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