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堅物教授vsドン・ファン学生 8
「おまえら、うるせえよ。散れ」
結城は左手を振って、仲間を追い払うような身振りをした。
「賭け? 聞き捨てならないな」
彼らの発言は自分にとって不利なものである、結城のその反応を敏感に感じ取った私が意地の悪い質問を繰り出すと、次の瞬間、松下たちの表情が変化した。
「何のことか、説明してもらおうか」
「えっ、それはその……」
もじもじしながら互いに目配せしていた松下と芝だが、私の突き刺す視線を受けて、しぶしぶと口を開いた。
「大が自分は子供からおばあちゃんまで、どんな女にもモテるって、あんまり自慢するから、それなら男相手はどうだ、って話になったんです」
どんな相手でも口説いてみせると豪語する結城に対して、だったら男を口説いてみろと仲間たちがけしかけたらしい。まったく、くだらないことを思いついたものだ。
売り言葉に買い言葉で、やってやると結城が承知し、ターゲットとして白羽の矢が当たったのはこの私、羽鳥準一(はとり じゅんいち)だった。
私に対する彼の急接近を不審に思っていたが、なるほど、やはりそういう裏があったわけか。
こちらの顔色を窺いながら、芝が「どうせなら目標は高い方がいい、って大が言うもんだから」と弁解すると、松下も同調した。
「先生って、早くから教授になったエリートでしょう。超がつくほどの美男子で、中年太りもしていないし、スマートでルックス抜群。クールで知的、気品のあるジェントルマンっていうか、とにかくオレたちの憧れの的なんスよ」
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