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堅物教授vsドン・ファン学生 9

「白衣姿ばっかりでイマイチ地味なのが惜しいんですよ。見た目は若いんだから、もっとオシャレすればスゴイことになるっつーか。大のバカよりよっぽど女にモテそうなのに、どうしてその齢まで独身なのかな、きっと先生のメガネにかなう相手がいないんだろう、なんて噂してたくらいで」  これはまた、ずいぶんと持ち上げてくれるではないか。イケメン教授の誉れ高い私の元に、絶対数が少ないとはいえ、女子学生が一人も入室しない謎には一切触れられていないけれど。  とにかく、お褒めをいただいて悪い気はしないが、エヘヘと照れ笑いする二人を前に、私の心中は複雑だった。  この際だから明白にしておくが、私は思春期に於いて、異性ではなく同性に目覚めてしまった生粋のゲイである。  多くの男と関係を結んだ過去もあったが、齢を重ねるにつれ、そういう交渉も少なくなり、今は皆無だ。  私の相手をしていた者たちは皆、女性との結婚を選び、普通の男として生きる道を選んだが、彼らを責めるつもりは毛頭ない。  大学を卒業して一歩社会に踏み出せば、ましてや、三十五歳も過ぎれば会社での地位と自分の未来──結婚に続く育児、老後──といったものを真剣に考えるようになって当然だからだ。

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