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堅物教授vsドン・ファン学生 10
かくいう私も世間体を考え、世話好きな人々のお蔭によってお見合いを重ね、婚約寸前までいったが、けっきょく破談になった。
相手の女性には申し訳ないが、ホッとした、というのがその時の偽らざる心情だ。妻に興味が持てない、生涯を共にするはずのパートナーにそんな指向があると知ったら、当人がどんなに傷つくことか。
一人の女性を不幸にしなかった代わりに、私は未だ独身。初体験の低年齢化が進む昨今において、三十九にして童貞のままであり、この先経験することもないだろう。一生独身を貫く結果になるという意味だ。
仕事の面では順調に歩んできたが、家庭を持つ一人前の男という点では完全に脱落してしまった私を憧れの的と呼んでくれる学生たちに罪悪感をおぼえていると、
「……それでいて真面目で堅物、なんて言ったら失礼かな。とにかく、そんな先生がこのバカの誘いなんかに乗りっこないから、オレたちの勝ちは決まったも同然ってゆーか、最初から勝負にならないけど、こいつがまた頑固で引かないんですよ」
同じ年代の学生を相手にするのではなく、自分の担当となる年上の教授を狙う。生真面目な性格で、恋愛やセックス等、一見そちらの方面にも潔癖に見える私を落とすことに成功すれば、仲間たちに己の口説きのテクニックの凄さをより強く認めさせることができるというわけだ。
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