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堅物教授vsドン・ファン学生 11
そんなの絶対に無理だ、失敗する方に一万円と言い張る松下たちに、成功に賭ける自分の倍の金を賭けさせたと聞いて、私は呆れ返った。
「くだらない賭け事をしている暇があったら、文献のひとつでも訳したらどうだ。ともかく、金のやり取りはやめなさい、いいね」
私の言葉にしょげ返った顔で頷く松下と芝とは対照的に、肝心の結城はしれっとしている。
ふてぶてしいというか憎たらしいというか、こいつを卒業まで面倒みなければならないと思うと気が重くなった。
「おまえらが余計なこと言うからだぞ」
「だ、だって」
「せっかく上手くいきそうだったのに、あと一歩のところでバラしやがって」
「嘘だよ、そんなはずあるわけ……」
反省の色を見せるどころか、松下にいちゃもんをつける結城、こそこそと会話する彼らをねめつけると、三人は口をつぐんだ。
何が上手くいきそうだったのに、だ。おまえごとき若僧の甘言に、この羽鳥準一様が乗せられるとでも思っていたのか、バカ者め。苛立ちがまたしても私を襲った。
私の表情をチラリと見てとると、
「さてと、それじゃあ先生を怒らせた悪い生徒たちは退散しますか」
食器の乗ったトレイを手に、捨てゼリフを吐く結城のジーンズのポケットからピロピローンとまぬけな音が聞こえた。
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