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堅物教授vsドン・ファン学生 12

 メールの着信音らしい、トレイをテーブルの上に戻し、スマホを手にした結城はそれから親指で画面をせわしなくタップした。 「何だよ、また女からお誘いのメール?」  モテるヤツは違うと、仲間のやっかみを平然として受け止めると、 「今夜の合コンの返事くれって。お嬢様揃いのフェイク女子大だぜ、行きたいヤツ、早い者勝ち」  素気無く答えてデコボココンビを見る。飢えた男共の目つきが変わるのを楽しんでいるかのようだ。 「はいっ、行く行く!」 「頼む、大。ボクも入れて」 「そんじゃ、手数料として一人千円な」 「ええーっ」  サッと手を出すこのがめつい級友に、二人の恨めしげな視線が突き刺さっている。 「二万円×二人分、貰い損ねちゃったもんな。取り返さないと」  この男、誘惑を成功させる気でいたのか。あくまでも賭けに勝つつもりだったのか。  なんて厚かましいヤツだ、その絶対的な自信はどこからくるのだと、呆れるとか怒りを通り越した気分で呆然としていると、二人に続いて席を立った結城はセルフサービスの食器を下げてから、単身で戻ってきた。 「金はあきらめましたけど、先生のことはあきらめていませんから」 「何だって?」 「狙った獲物は絶対にゲットするのが信条なんスよ。そこんとこヨロシク」  ニヤッと笑ってウィンクすると、結城は悠々とした足取りで食堂を出て行った。  残された私はやり切れない思いで冷え切ったコーヒーを飲み干し、またしてもむせ返ってしまった。

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