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賭けの対象? 3
そのうちに四回生たちも集まってきて、本日の文献調査が始まった。
「……以上の実験の結果、それらの特性を決める遺伝子はそれぞれ独立した関係にあり、個々の優性と劣性が出る割合は次の式によります」
さっきまで賑やかだった室内は静まり返り、インキュベーターのモーターが低く唸る音と、発表を担当する学生が英文を訳したものを読み上げる声だけが響く。
結城が欠伸を噛み殺したのが見えて、私はそちらを軽く睨んだ。
どうせ昨夜は例の合コンにいそしんでいたのだろう。フェイク女子大のお嬢様を見事にゲット、ホテルへのチェック・インに成功したのかもしれない。軽薄な男に引っかかる女がお嬢様であるはずもないが。
華やかな女子大生に囲まれて盛り上がっている結城の姿を想像したとたん、私は腹の底からムカムカが湧き上がってくるような、イヤな気分に襲われた。
なぜだ? なぜ、そんな不愉快な場面を想像しなくてはならないのだ。そこまで意識を飛ばす必要などないのに。
いや、それ以前に、結城が女たちと盛り上がっている場面を不愉快だと感じるのがおかしい。学部一のドン・ファンには日常茶飯事のはずだ。
そうか、学食で彼が放った一言が原因だ。私をあきらめていない、などと言いながら、合コンにも参加する節操のなさが不愉快なのだ、きっとそうだ。
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