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賭けの対象? 4
評判の女タラシ──そういう男だと割り切って相手をするのが普通なのに、彼に対して「節操がない」などと腹を立てる自分にも問題があるのに、そういった点には目をつむるという、いたって自己中心的な考えを巡らせた私は結城への嫌がらせを思いついた。
発表終了後、来週からは三回生に順番を回すと告げると、彼らは口を揃えて「げーっ」と下品な反応を示した。
「先輩たちの中で発表した人、まだ半分もいませんけど」
「何だ、文句があるのかい」
「いえ、そういうわけじゃ」
「それではこうしよう。その週の文献が終了したら、未発表のメンバーの中から四年三年関係なく、アトランダムに次週の当番を指名するのはどうかな。いつかはやらなければならないんだ、遅いか早いかの違いだろう」
「そりゃまあ……」
不服そうな彼らを見て、ざまあみろと私は溜飲を下げた。
これは教授を手玉に取ろうなどとする、生意気で身の程知らずの学生に対する、ささやかな報復だ。
まあ、『ささやか』かどうかはともかくとして、とばっちりを受けた他の四人には気の毒だがこの際、犠牲になってもらおう。そもそも、研究室をサロン代わりにして、くつろいで過ごそうとすること自体、間違っているのだから。
「さっそくだが来週の当番は結城、キミだ。しっかり調査しておくように、いいね」
有罪の判決を下す裁判官のごとく、冷淡な声音を使ってみる。
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