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賭けの対象? 11
そんな経緯など知る由もなく、結城は自信たっぷりに続けた。
「今さら隠さなくてもいいですよ。ナオヒコさんの存在を知ったから、俺には確信が持てた。何かわかりますか? そう、先生がマジゲイだってこと。エリート教授が四十手前まで独身の理由も判明しました」
羽鳥準一には同性愛の下地がある──当人が異性愛者ならば、男である自分に口説ける見込みはないが、同性愛者とわかったからには、他に相手がいたとしても何とかなるかもしれない。結城はそう考えたのだ。
彼にとって、松下たちとの賭けはまるっきり勝ち目のない勝負ではなかった。勝てる可能性を試算していたのだ。
こちらが思っていた以上に、したたかな若僧に内心舌打ちしながら、それならばと私は開き直ることにした。
「この私の秘密を握ったというわけか」
「別に恐喝したりしませんから」
そう言って結城は薄笑いを浮かべた。
「ナオヒコさんに勝ちたい。俺が先生にとってのナンバーワンになりたい。ま、そんなところです」
尚彦に勝ってナンバーワンになる。それは彼を蹴落とし、私の恋人の座に就いて愛情と信頼を勝ち取ること。
そんな結城の宣告をそのまま受け止めるなど、どうしてできようか。魅惑的な若者の言葉に浮かれ、動揺している場合ではない。私は師として彼を教え、導く立場にある者なのだ。
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