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賭けの対象? 12
それに、そのセリフを額面どおりに捉えていいものかどうか、まだ疑問が残る。タラシとして名を学内に知らしめた、ここまでの所業を考えれば信用ならないのは当然だ。
ひと筋なんて口から出任せに過ぎない、マジゲイ宣言は隠れ蓑で、女との二股三股は当たり前だと勘繰ったとしても、私を責める者はいないだろう。
「随分と殊勝な心構えだね。まあ、せいぜい頑張りたまえ」
白けたフリをして背中を向けた私の手をむんずと捕まえると、結城は身体を抱き寄せてきた。これぞ若さゆえの性急な行為か。
「何の真似だい?」
「俺から先生への愛情表現です。ナオヒコさんへの挑戦です」
寝言を聞いて以来、彼は今でも私と尚彦がつき合っていると思い込んでいるようだが、そこらは黙っていよう。
「とりあえずはキスから始めましょう。すぐに虜にしてみせますよ」
キスから始めるだと?
いつもこんな手を使っているのか。物事には順序というものがあるのに、いきなり飛躍している上に虜だなんて思い上がりも甚だしい。
だが、有無を言わさず唇が押し当てられ、その熱さ、柔らかさに、私は抵抗する術を忘れていた。こちらの口中に入り込み、激しく絡んでくる舌をどうすることもできず、なすがままになる。
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