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賭けの対象? 13
押し寄せてくる久々の快感に頭の芯が痺れてしまい、気がつくと十分以上もキスされていた。しまった、予告どおり虜になっているではないか。
「……俺、けっこうねちっこいって言われますけど」
唇に付着した唾液を掌で乱暴に拭き取りながらの、なかなかにいやらしい場面で爽やかに語るこいつが憎らしい。
「そうみたいだね」
すっかり相手のペースに引きずり込まれているが、抵抗も反論も大人げないし、この際取り乱すことだけは避けたいと、私は気を静めて答えた。
「テクニックはなかなかのものでしょう?」
「さあ。よくわからないけど」
「ねちっこいのとあっさりしたの、どちらが好みですか?」
「ケースバイケースだな」
「じゃあ、これからもねちねち路線でいきますから覚悟してください」
これからも、だと?
私はこの男とこんなふうに、じわじわと関係を深めていく羽目になってしまうのか。十八も年下の、研究室の教え子と──
本気にしてはいけない、本気になるのはなお、まずい。惹かれていく想いと、それはいけないと抗う気持ちが交差して、頭も身体もおかしくなりそうだ。
数多の不安にかられた私の耳に、昼休みの終了を告げるノー天気なチャイムの音が流れ込んできた。
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