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天敵現る 1

 三田洋(みた ひろし)と名乗る学生の訪問を受けたのは翌日のことだった。  講義も何もない、比較的楽なスケジュールなので、今のうちに実験のデータをパソコンに入力しておこうと思い立ち、ディスプレイとにらめっこをしていたところ、廊下側のドアをノックする音が聞こえてきた。  付け加えておくが、この執務室は実験室と連絡しているドアの他にも、廊下から直接出入りするためのドアがある。訪問者は実験室経由ではなく、じかに私を訪ねてきたのだった。 「羽鳥先生、いらっしゃいますか」 「はい、どうぞ」  返事をすると、開かれた扉の向こうに立っていたのは見覚えのない、痩せぎすの小柄な学生だったが、それにつけてもかなりの美少年ぶりには驚愕してしまった。 「お邪魔します。ちょっとお時間をいただけますか?」 「ええ、かまいませんけど」  パソコンを終了させて向き直った私は彼にソファを勧めた。  機械工学科の一回生だという話だが、十八、九歳にしては幼く見える。栗色のさらりとした髪に、白くて肌理の細かい肌、小さくまとまった顔。目が大きくて睫毛がやたらと長い。幼児向けに売られている着せ替え人形の男の子バージョンはきっとこんな感じだろう。  高級ブランドのシャツを何気なく身につけ、腕にはプラチナのブレスレットが光っているが、もちろんブランド物。垢抜けた、良家の子息の見本品みたいな学生だった。

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