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天敵現る 5
彼らが並んでいる図を思い浮かべた刹那、キリキリとした胃の痛みをおぼえた。似合いの二人に対する嫉妬であると、認めざるを得なかった。
私の表情を探るように見ていた三田はふいに、とんでもないことを言い出した。
「羽鳥先生はもしかして、結城先輩がお気に入りなんじゃありませんか」
こちらの心理を見透かしたようなセリフに一瞬ドキリとするが、こんなガキに負けてはいられないと、すぐさま切り返す。
「お気に入りねぇ、何でまた? そう思った根拠を聞かせて欲しいな」
「先輩を研究室の中に閉じ込めておきたいから、サークルなんてやめろ、ってそそのかしたんだ。やめなきゃ成績が下がるって脅迫したんですね。同好会にも先輩のファンはたくさんいるから、その人たちに取られたくないから、でしょ」
「面白い発想だね」
バカらしいと否定すること自体がバカげている。
私が取り合わないので、三田はムキになって挑発してきた。
「若者と張り合うのは無理があるんだって自覚した方が身のためですよ。いくら若作りしたって」
若作り? 誰が、って私のことか? いきなり容貌への攻撃とは低レベルではないか。
「同じ齢の男の人たちより少しキレイで、お腹も出ていないからって」
思わず白衣越しに自分の下腹部を見る。大学職員の健康診断では幸い、メタボの判定を受けたためしはない。
「もうすぐ四十歳になるんでしょ、ボクたちから見れば立派なオジサン、オヤジなんですから」
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