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天敵現る 7

「先生、文献調査はこのページの……あれ?」  その場に三田がいるのに気づくと、結城は目をぱちくりさせた。 「結城先輩、いつの間に」  憧れの人の登場に三田の顔がパッと輝き、甘ったれた声を出すやいなや、ふさふさと目には見えない尻尾を振りながら、結城の元に駆け寄った。 「一年のおまえが何で研究棟にいるんだよ?」 「だって、先輩があんなこと言うから……」 「あんなこと?」  堪忍袋の緒が切れかかっていた私はすかさず「三田くんからキミのサークル退部の経緯に関する感動的な話をいっぱい聞かせてもらったよ」と、皮肉たっぷりのセリフを投げつけた。 「感動的な話って……」  ちゃらんぽらんのマイペース男の顔がさすがに青ざめてきた。 「先輩思いのいい後輩じゃないか。勉強が大変だから、などと言わずに、彼のためにもサークル活動と両立出来るよう、頑張ったらどうだ」 「彼のためにも」をフォルテシモにして、さらに追い討ちをかける私と、すがるような目で自分を見上げる三田を交互に見やったあと、結城は突然、廊下側の扉を開け、三田の背中をそちらの方へと押しやった。 「せっ、先輩、何?」  憐れな美少年の顔が歪んだが、それにはかまわず、 「退部じゃなくて、しばらく休部にする。それなら文句はないだろう? 部長にもそう伝えてくれ、いいな」  強い調子で念を押した結城は三田を部屋の外へ強引に追い出すと、バタンッ! と扉を閉めてしまった。

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