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天敵現る 9

 シッサス・エレンダニカ。寒さや乾燥にも強く、日陰でもよく育つ種類だが、その名前を知っているとなると、かなりマニアックではなかろうか。ということは、私は一種のマニア、観葉植物オタクとなる。 「床に置いてある背の高い方、カフェとか、そういう店でよく見かけますよね」  モンステラ。その隣はフェニックス。よく見かけるということはカフェの類によく行くからだろう、もちろん女と。 「何てこった。俺、ポトスしか名前がわかんなかった。もっと勉強した方がいいですね、文献にあるかな」  植物は植物でも園芸の分野だ、遺伝学の文献にあるわけなかろう。  趣味の観葉植物ネタへの反応がない、私が一向にノッてこないので、彼はようやく雑談から本題に入る決意を固めたようだ。 「怒ってますよね」  無言でデータ入力を続ける私の背中に投げかけられた言葉に対して、代わりに答えるのはキーボードの音だけ。 「退部の理由が他に思いつかなくて……勉強が大変になったと適当に答えたら、研究室の先生が厳しいからだ、って誰かが言い出して。あっという間に、その話に尾ひれがついちゃったんです」  パチパチ、カタカタ。 「で、あいつは、三田はその、尾ひれつきの説を頭から信じたみたいで。不愉快な話を聞かせてすいませんでした」

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