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天敵現る 13

 そう否定したあと、結城は眩しそうに私を見つめた。 「どうでもいい、なんて、そんなふうに思うわけないですよ。その、とてもよくわかって有意義な内容です。先生が教えてくれるから、なおさら」 「そりゃあどうも。教壇に立つ張り合いが出てきたよ」  私の反応をどう捉えたのか、立ち上がった結城が背後まで進んできた。  椅子の背もたれに手を置いて腰を屈め、パソコンの画面と、こちらの手元を右斜め後ろから覗き込むという、親しげなポーズにドキリとする。頬にその息がかかって、さらなる緊張感が増した私はまたしても、余計なことを口にしてしまった。 「ひとつ指摘しておくが」 「何ですか?」 「これは昨日の時点で明確にすべきことだったのだが、今の我々が置かれた状況で、キスから始めるというのは短絡的ではないのかな。そこまでに至る工程をいささか端折り過ぎだと思うのだがどうだろう。キミは自分でも言っていたように、まだ私を落としてはいないのだからね」  四十男に可愛げなどあるわけない。必要以上に堅苦しい表現の物言いがいかにも理屈っぽい、理系の学者らしいが、この身に染みついてしまった口調はなかなか変わるはずもなく、予想外の言葉に怯んだ相手が身体を引くのが感じられた。 「そう……でしたっけ。すいません、昨日のアレで、てっきりオッケーしてもらったもんだと思ってたから。先走っちゃいました」

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