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嫉妬と不覚 3
ふと、私の視線に気づいたのか、結城がこちらを見て「あれ、先生」と呼びかけた。
「生協で買い物ですか、早く言ってくれれば俺がおつかいしたのに」
私が何か言おうとする前に、三田がこちらにガンを飛ばしてきた。
「あー、若作りの先生だ」
こいつ、首絞めたろかと、瞬時に殺意がほとばしる。
私の殺気を跳ね返した三田は結城に「何で先輩が小間使いみたいなマネをしなきゃならないの」と訊いた。
「何で、って……」
「ここまで歩いてくるのなんて大した距離じゃないでしょ。中高年は運動不足になりがちだから、研究室に閉じこもってばかりいないで、少しは外を散歩した方がいいんですよ。ねぇ?」
その「ねぇ?」は何なんだ。
先の集団は何者だ。だいたい、結城はなぜ三田と一緒にいるのだ。
研究室から追い出し、締め出したほどの相手、邪魔くさくてウザッたいヤツではなかったのか、その親しげな笑顔の真意は?
だが、私は一切コメントをせずに踵を返すと、集団の最後尾と二人の間にできた隙間に入って廊下を急いだ。
「先生、待ってくださいよ。俺も今から研究室に戻って文献やりますから」
「ええっ、どうして? 今日はみんなで一緒にコンパに行くって話」
「だからそれは俺が言ったんじゃなくて」
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