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嫉妬と不覚 4

「部長命令ですよ。命令が聞けないっていうんですか?」 「命令って……」 「約束したじゃないですか!」  何やら言い争いを始めた二人だが、そのやり取りさえ痴話喧嘩に聞こえてきて不愉快千万、さらに歩を早める。  その時、私は何を考えていたのだろうか。恐らく胸の内では結城と三田に対しての嫉妬が渦巻き、頭に血が上ってまともな思考ができなかったに違いない。  カーッとなってやった、という言い訳をよく聞くが、カーッとなる人物とはよほど人間が練れていない、いい大人のくせに未熟者だと軽蔑していたにも関わらず、今の自分はまさにカーッとなっている。未熟者だ。 「先生、そこ危な……」  苛立ちから危険を察知する意識が低下していたのと、おまえの声など聞きたくないと耳が拒絶していたせいか、時既に遅く、私は見事に階段を踏み外していた。 「あっ!」  と、私の左腕を素早くつかむ結城、しかし落下にかかる重力に勝てるはずもなく、私は後方に仰け反った格好で、一方の結城は前へとつんのめる形で、二人揃ってそのまま一階までなだれ落ちる。 「先生っ!」  結城の叫びが聞こえたとたん、目の前が真っ暗になり──

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