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嫉妬と不覚 5
──そして気絶した私が次に見たのは病室の光景だった。
白い壁、ブルーのカーテン、消毒液の臭いに飾り気のないベッドは殺風景そのもの。窓からの光を感じないところから時刻は日没後。点滴を調節する機械の音だけが低く響き、他に患者のいない室内は不気味なほど静まり返っていた。
「ここは……?」
病院、それも大学に近い場所にある総合病院だとすぐわかるのに、わざわざ居場所を確認してみる。
映画やドラマでお馴染みのシーン、お馴染みの陳腐なセリフを自分が口にするとは思ってもみなかった。
「気がつきましたか、良かった」
これまたよくあるパターンのセリフ、今は素直に働く耳に聞こえてきたのはもちろん、結城の声だった。
「その怪我は?」
青白い蛍光灯に照らされて覗き込む顔の額に大きな絆創膏が貼られているのを見て、私は罪悪感の塊になってしまった。
階段から落ちた時にぶつけたものだろうが、私を助けようと腕をつかまなければ巻き添えを食わずに済んだはずだ。
「ああ、これ大袈裟なんスよ。もう痛くも何ともありませんから。それより先生の方が心配だ、後頭部を打ってますからね。医者の話じゃ大丈夫みたいだけど、念のためにもう一度検査するって言ってました」
「そう……」
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