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嫉妬と不覚 10

 二人に嫉妬した挙げ句、四十近くにもなって大人げない言動を繰り返す私のどこがクールで知的でジェントルマンだというのだ、ちゃんちゃらおかしい。  あはは、と私は可笑しくもないのに笑った。笑いながら涙が出た。とめどなく溢れる涙が枕を、シーツを濡らす。  とっくにわかっていた。  これまでの彼の素行、女遊びの行状を並べ立てて、あいつはダメだと否定したくとも、私は結城に惹かれている。  齢の差がどうの、師弟関係がこうのと理由をつけても、この気持ちは誤魔化せない。拭い去るなど不可能だ。  だが、我が意のままに突き進むなど、私のような状況に置かれた者にできようか。様々なタブーを撥ね退けるほどの強さを持ち合わせていない小市民はひたすら悩むのみ。  想いの迷路に入り込み、混乱したままの私はぐったりとし、怪我と疲労が重なったせいか、いつの間にか寝入ってしまった。

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