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パンダと茄子とクリスマス 1

 翌朝、再検査を終えてしばらくすると、退院のお許しが出た。何ともない、至って元気だから退院させてくれとゴリ押しした成果である。  さっさと職場復帰しなければ、学生たちに迷惑がかかる──なんて、休講になった方が彼らは喜ぶだろうが。  ベッドの周りを片づけていると、結城がひょっこりとやって来た。絆創膏を剥がした痕が紫色になっていて痛々しい。 「先生が退院するって連絡を貰ったんで、急いで飛んで来ました」  緊急連絡先と称して、自分の携帯電話の番号をナースステーションに告げていたらしいが、そのちゃっかりぶりに呆れるやら嬉しいやら。 「もっとかかると思ってたけど、こんなに早く退院できて良かったですね」  しかし、昨夜この場所で、自分の気持ちを再認識したにも関わらず、相変わらず素直になれない私は渋面を作ったまま「今日の授業はいいのかい、まさかサボッてないだろうね」などと訊いた。 「土曜日の講義なんて、よっぽどの理由がなきゃ履修しませんよ」 「バイトは?」 「休むって連絡しておきました」 「金がないと言ってたくせに、困ったコトをするヤツだ」  やれやれと肩をすくめるポーズを取ってみせる。嬉しいくせに困ったフリをするヤツは誰だ。 「ナオヒコさん、来なかったんですか」 「あ、ああ。昨夜は早々に寝てしまって、電話するのを忘れた」

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