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パンダと茄子とクリスマス 12
さすがは何でもありの男、そういえば先の文献のあと、年齢にしろ性別にしろ、相手へのこだわりがないといった内容の話をしていたのを思い出す。
気にしていないからと、いとも簡単に片づけられてしまい、昨夜は涙まで流した、これまでの私の悩みはいったい何だったのか、愕然となった。
「齢の差って、やっぱり気になりますか?」
「とっ、当然だろう」
「そうかなぁ」
首を傾げるな、首をっ!
「じゃあ、どうしてその三十代の女性とは長続きしなかったんだ。年齢の壁があったせいじゃないのか」
「いいえ、婚約が決まってお払い箱になったんですよ。婚約者はけっこうイケメンのエリートサラリーマンとかで、ライバルが多いからゲットできるかどうかわからなかったらしくって、二股かけられてたってわけで。カッコ悪いですかねぇ」
エヘヘと決まり悪そうに笑う様子に、呆れた私は「女を渡り歩くはずの稀代のドン・ファンが手玉に取られ、逆に渡り歩かれてしまったのか。お粗末だな、じつにカッコ悪い」と冷淡に言ってやった。
「ドン・ファン、って何ですか?」
「知らなくていい」
不機嫌な私の反応を見ると、それ以上は訊かずに、
「二股っていうか滑り止め? それとも単なる遊びだったんでしょうか、きっとそうだ。他の人と結婚を考えてるときに、学生の俺なんかとじゃあ、本気でつき合えるはずないないですし」
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