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パンダと茄子とクリスマス 13
「それでキミは悔しいとも思わなかったんだな。お互いに遊びだからかまわない、そこまでの関係だったと割り切ったわけだ」
何やら会話が脱線してきたが、具体的な女性関係を聞かされ、ついムキになって絡んでしまう私に、彼はニンマリと笑いかけた。
「そう、未練も何もないですよ。きれいさっぱり、大人の関係ってやつですね」
二十一のガキが大人の関係だと? 年長者を前に言ってくれるではないか。私よりもはるかに経験豊富で、修羅場をくぐってきたような物言いにアドレナリンの分泌量が急上昇する。
それにしても、ベタ惚れなどと口にしたあと、今までの遊びの関係を自慢げに話すとは。真剣なのか、ナメているのかわからない結城の態度に、真摯に見えたさっきの告白すらも嘘臭く思えてきた。
彼の中ではまだ、あの賭けは続いているのではないか。
なかなか手に入らない相手に対し、自分では本気だと錯覚して追いかけているだけで、その心を捉えたとたんに熱が冷めるのがタラシの公式、そこでくるりと背中を向けるのがヤツらの習性だ。
そんなふうに考えると、気持ちが萎えてくる。私は失いかけていた冷静さを取り戻すと、態勢を立て直した。
「さすが、場数を踏んでいるだけのことはあるね」
「先生ならどうしますか? 俺とナオヒコさんと、二股かけられます?」
「いきなりネタをフッてくれるね。私は誠実という言葉を愛する男だ」
「二股なんてとんでもないと?」
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