73 / 113
皮肉な再会 2
二人のお褒めにあずかった今の服装はたしかに、最近の私らしくない格好だった。
煉瓦色のワイシャツに、果てしなく黒に近い焦げ茶のネクタイ、生成りのスーツは全て洒落者の尚彦の見立てで購入したものだ。
彼と別れて以来、袖を通す気にならなかったものの、処分するにはもったいないとクローゼットの肥やしにしていたが、それを今になって引っ張り出したのはやはり、結城や三田の影響だろう。
くすんだ中年のままではいられない、もっと身なりに気を配らねばという意識が私にこの服を選ばせたのだ。
ついでにメガネもいつもとは違う、銅色の縁のものに変え、鏡の前で念入りに全身チェックを済ませると、これで完璧だと自負、自信満々で家を出たのである。もっとも、松葉杖姿ではイマイチなのだが……
しばらくして残りのメンバーも集まってきたが、ウチの研究室はどういうわけか他に比べてコンパの機会が少なく、三回生たちとの飲み会は彼らの入室歓迎会以降初めてである。そのためか、みんなの気合の入れ方はかなりのものだった。
結城は一番あとにやって来た。今朝の格好と同じ、ジーンズに黒のシャツ姿で、いくらか浮かない顔をしている。
「よく来れたな、おまえ。女と約束があったんじゃないのか?」
仲間のやっかみやからかいにも苦笑いで誤魔化すあたり、妙だ。私に怒鳴られたのをまだ気にしているとでも?
ともだちにシェアしよう!