75 / 113

皮肉な再会 4

 何を考えているのか知らないが、向こうが黙っているのなら、それでいい。放っておけばいいのだ、敢えて気を遣って話しかける必要はない。キス+αまで許した仲とはいえ、年下の男に媚びるような真似はプライドが許さなかった。  従って結城とはこれといった会話もなく、私は時折、芝たちの話題に相槌を打つ状態のまま、問題のダイニングバーに到着した。  そこは思っていた以上に広い店で、ちょっとしたパーティーなどにも利用される機会が多いらしい。地中海リゾート風を謳った店内を柔らかい間接照明が明るく照らし、温かみのある空間を創り出している。  私は地中海に行ったことがないので、あの辺りの地域が本当にこんな雰囲気かどうかはわからないが、気取りがなく、それでいて洒落た感じがするのはまずまずだと思った。  松下たちが店員に二言三言話しかけると、残りのメンバーを手招きした。席の確保だけでなく、コース予約を入れておいたのだろう、さすがに手回しがいい。  私と比丘田を中心に全員が席に着いたのを見計らって、ビールのピッチャーと料理が運ばれてきた。  シーフードサラダにピザ、マリネにパスタといった、イタリア風が主なメニューだが、なかなか豪勢だ。料金のわりに店の雰囲気や料理の内容が良いと評判で、比丘田がお薦めしたのもよくわかった。 「それでは、羽鳥先生と比丘田くんの無事の退院を祝って、乾杯の音頭を取らせていただきます」

ともだちにシェアしよう!