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皮肉な再会 5

 松下の合図で各自のグラスがカチンッと音をたてる。 「さあさあ、先生も遠慮なく飲んでくださいよ。おーい比丘田クン、退院を祝して久しぶりに潰してやろうか?」 「ええーっ、勘弁してくれよ。今度は急性アルコール中毒で入院になっちゃうよ」  わいわいとはしゃぐ仲間たちに引き換え、結城は黙ってビールをあおっている。四月の歓迎会の時は先頭に立って騒いでいたヤツの沈黙は不気味なほどに怖い。  私は彼の周りの空気がどんよりと澱んでいるのを見ないよう努めた。近づいたら吸い込まれそうなブラックホール状態だ。 「しばし御歓談をお楽しみください」  なんて、披露宴ではないけれど、それでも研究室の御一行は一名を除いてそれなりに楽しく盛り上がっていたのだが、我々の平穏な時間はある人物の出現によって破られた。 「あっ、結城先輩だ!」  聞き覚えのあるカン高い声がするや否や、こちらのテーブルに駆け寄ってきたのはお察しのとおり、三田である。奇遇ですねと言いながら結城に擦り寄る様はゴロゴロと喉を鳴らす猫を彷彿させる。  尻尾を振る犬に続いて猫。軟弱で鼠すら捕れない、クソ役にも立たないくせに血統書つきのペルシャ猫だ、いまいましい。  臙脂のベルベットのスーツ、ピンクのワイシャツに赤い蝶タイなんぞを結んでいるあたり、何やらセミフォーマルな装いだが、ここで結婚式の二次会でも行なわれているのだろうか。だが、それらしい集団は見当たらない。 「……へえ、退院のお祝いなんですか」

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