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皮肉な再会 10

 羽鳥先生を準一などと気安く呼ぶこの男は何者だと、学生たちの視線が尚彦の面に突き刺さっている。ことに結城は敵愾心剥き出しで、隙あらば喉笛に噛みつきそうな気配を漂わせていた。 「家内だ。あ、座ったままでいい、その脚で無理はするな」  尚彦の紹介を受けて、彼の妻は軽く頭を下げた。年齢は三十代半ばぐらいか、いくらか冷たい感じの顔立ちだが、かなりの美人だ。派手な色合いのオレンジ色のワンピースをさらりと着こなしている。 「羽鳥準一さんですね。初めまして、日立の妻の琴美です」 「ど、どうも。その節は大変申し訳ありませんでした。せっかく結婚式の御招待をいただいたのに所用で失礼して」 「いいえ、大学の先生ってお忙しいんでしょう、こちらこそ無理を申し上げてしまって」  本当は用事も忙しくもなかったのだが、別れた相手の結婚を祝福するほど人間が出来ていなかっただけ、尚彦も承知のはずだ。 「それにしても、関東方面へ戻ってきたとたんに、おまえに会えるとはね」 「横浜支社とか言ってたな。いつ引っ越してきたんだ?」 「三日前だ、大倉山のマンションだよ。そっちはずっと川崎だよな」 「四年前と同じ、何の変化もないよ」 「オレたちも子供がないせいか、週末は退屈している。また遊びにきてくれ」  ポケットから名刺を取り出した尚彦はその裏に住所と電話番号をすらすらと書いた。二人を見つめる連中の手前、私も仕方なく新しいケータイの番号付きで名刺交換をする。

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