85 / 113
皮肉な再会 14
「三田が余計なことを言ったせいで先生が苛立っていたって。それで注意力が散漫になったんじゃないかってことです。俺があいつを先生に引き合わせたようなものだから」
そういえば「少しは責任感じろよ」と言われていたが、そういう意味だったのか。
二人の親密そうな様子がきっかけだったという点で、三田のせいというのは当たらずも遠からじではあるが、それをいきなり結城の責任にするのは飛躍してはいないか。
いや、松下は軽い気持ちで言ったのだろうが、結城の方が大袈裟に捉えているといったところかもしれない。
「今朝、ここで先生が脚をひねったでしょう。あのときの俺は自分の欲求ばかりが先に立って、先生が怪我をしてることなんて頭になかった。いかに自分がいい加減で、好き勝手で鈍感な人間かを思い知らされて、すげぇショックでした」
病院へ戻った方が、などと口走った彼のうろたえぶりはそのショックが招いたものだったのだろう。私が怒鳴りつけたことも拍車をかけたらしい。
「俺ってば鈍感だから、階段の事故の原因が三田にあるって、すぐにはピンとこなかったんですね。松下から言われて、やっと気づいたんです。先生の怪我って間接的には俺のせいじゃないか。そうとわかると、退院祝いに参加するのもためらっちゃいました。それでも先生と一緒に行きたくて、なのにまた、店で三田に会ってしまった。とことんツイてないっス」
ともだちにシェアしよう!