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皮肉な再会 16

 そんな気分を落ち着けようと、私が取り出したタバコのパッケージを横から奪うと、結城はその一本に火をつけたが、すぐにゴホコボと咳き込んだ。 「普段吸ってないヤツが無理をするなよ」  そう諌めると、結城は投げやりな口調で突っかかってきた。 「どうせ俺はタバコも吸えないお子様、そう思ってるんですね」 「何くだらないことを……」 「さっきの店で会ったあの人がナオヒコさんだって、すぐにわかりましたよ。見た目も中身もすごく大人で、俺が想像していた以上にイイ男で、思わず歯軋りしちゃいました。彼とは不倫の関係だった、それで思うようには連絡が取れなかったんだ」  いよいよ本題だと身構えつつ、私は冷静に答えた。 「彼は三日前に横浜へ引っ越してきたばかりだと、キミも聞いていただろう」 「さあ、おぼえてませんね。不倫も大変だけど、もれなく三田がオマケでついてくる俺なんかと一緒にいて、イライラさせられるのはつまらないし、難しい選択ですね」  現状がどうこうではなく、私と尚彦がつき合っていた、深い関係にあったという事実そのものが彼を不快にさせているのか。  実物の日立尚彦を、生身の彼を目の当たりにして、こいつが羽鳥準一の相手だったのかと湧き上がった実感に不快さが増した。そう解釈すると気持ちはわからないでもないが、苛立ちをぶつけられて、こっちが不愉快になってきた。

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