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皮肉な再会 17
「過去の恋愛に対して、いちいち嫉妬されるのは適わないな。それなら女性が相手だったとはいえ、経験豊富なキミの方がよっぽど脛に傷だ。自分に不利だとは思わないのか、勝手な言い草はやめてくれ」
「過去……じゃないっスよ。先生はまだあの人を」
そこまで言いかけて結城はいったん口をつぐんだ。
「たしかに妬いてるのは認めます。だけど、負けてるとか、敵わないとか、絶対に思いませんから。ははっ、余裕ですよ、余裕」
わざと明るい口調で強がってみせたあと、立ち上がった彼は私に敬礼のポーズをとって見せた。
「帰ります。お邪魔しました」
立ち去る後姿に、私は何も言えなかった。
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