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女王陛下の騎士 2

 コーヒーの香りとタバコの匂い、カップをテーブルに置いて向かい合わせに座ると、タイムトリップしたかのような、そこに彼のいる風景が広がる。  四年前と同じだ、自分がいつを生きているのがわからなくなった。  夕陽の別れも、私似の女性との結婚も、すべては夢か幻、なんて、尚彦との関係が今さらどうなるわけでもないのに、奇妙な幻想に囚われる。  結城との関わりに疲れたからといって、逃げ道を作るべきではない。ちっぽけな期待とか、つまらない未練はこの際封印すべきだと、私は自身を戒めつつ訊いた。 「で、何のつもりだ。ケータイの番号を教えたのにアポなしで突撃とは、まったく驚かせてくれるよ。まさか月曜の朝イチから会社をサボッて、思い出の川崎市内巡りをやるからつき合えと言い出すんじゃないだろうな」  カップを手にしたまま、尚彦は薄笑いを浮かべた。 「いや、おまえが不便な思いをしてるんじゃないかと心配になってな。当然チャリには乗れないし、毎度タクシーを使うのも金がかかって大変だろうし、車で来てるから乗って行くといい。早めに着くのは大目にみてくれ、こっちも出社の時間があるからな」  いつもは自転車で通勤している私の身を慮った尚彦は大学までの送迎を買って出たのだが、そうとわかると嬉しいような申し訳ないような、それでいて余計な真似をしないでくれという複雑な気分になった。

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