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女王陛下の騎士 4

 別れる一年前。引っ越しを手伝ってくれたことも忘れてしまったのかと憮然となる。 「じゃあ、あれからほとんど人が増えていないってことだな」 「入れ替わりが激しいんだ、半年も経たないうちに出て行く人もいたよ」  黒いセダンはゆっくりと発車、最初の交差点を右に曲がる時、向こう側からくる自転車に目を留めた私はギクリとした。  見覚えのある者が自転車に乗っていると思ったら結城ではないか。  これから大学へ向かおうとする私たちとは反対の方向へ進んでいるが、こんな早朝からいったいどこへ……もしや私を迎えに来たのではないのか? そう気づくと思わず声を上げそうになった。 「何かあったのか?」  運転席の尚彦が訝しげに問う。 「い、いや、別に」  尚彦の運転する車に乗っているとヤツが知ったら、どういう展開になるのか恐ろしくて想像できない。絶対に見られないようにしなければと、頭を低くしながらサイドミラーを注視した。  幸い気づかれてはいないようで、自転車はカーブの向こうに消え、胸を撫で下ろしながら頭を起こす。  私の奇妙な仕草には言及せず、尚彦はそこの角にあった飲み屋はどうしたとか、新しい道路ができている、えらく立派なビルが建っている等の話題を持ちかけてきたが、的を射ていない返事を聞いて顔をしかめた。

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