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女王陛下の騎士 8

 結城は「ども」と短く答えた。  彼なりに大人の対応をしているつもりなのか、取り澄ました表情で尚彦と向き合ってはいるが、その全身から発せられる殺気は隠しようがない。  私は努めてさり気なく「私が途中で転んだりしないかと心配して、ついて来てくれてるんだ」と嘘臭い弁解をした。 「そうか、女王様をお守りする騎士といったところだな。もうすぐ四十がくるというのになかなかお盛んじゃないか」  この一瞬にして尚彦には全てが飲み込めたらしい。いたずらっぽい目を向けて、 「学生時代からそうだったよなぁ、準一。おまえの周りには騎士候補がいっぱいいた。おまえが並み居る男連中を骨抜きにしたなんて、先生と呼んで尊敬する学生諸君には想像もつかないだろうよ。紅顔の美少年が今じゃ、クソ真面目な堅物になっちまったからな」 「つまらない昔話はよせよ」 「あれは卒業して何年経ったときだっけ、ナンバーワン騎士の座を巡って決闘、いざ尋常に勝負! なんてシーンもあったな。勝利の美酒に酔ったぜ、じつに美味かった」  おいこら、そんなふざけた喩え話をして、これ以上結城の怒りを煽ってどうするのだ。  私はハラハラしながら「やめろよ」と尚彦を諌めたが、彼はそれこそ酒に酔っているかのように饒舌になり、過去に於いて私が男たちに、いかにチヤホヤされたかを力説し、また、自分が選ばれた存在であったことを自慢げに語った。

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