97 / 113

女王陛下の騎士 9

「おい、いい加減にしろって!」  私が声を荒げると、尚彦は舌を出して肩をすくめた。 「ああ、悪かった。君、結城くんだったね。準一に悪い虫がつかないように、よろしく頼むよ。何たってオレの大切な親友だからね。さて、それじゃあ、ぼちぼち参りますか」  朝と同じく、正門の方に車を停めたという。先に立って歩き始めた尚彦の背中をねめつけながら「ども」以降、何も発言しなかった結城は「今朝乗ってきたのも私設タクシーだったんですね」と訊いてきた。  ジェラシーボルテージは最高値に達しているのだろうが、感情を押し殺そうと我慢しているのがよくわかる。  今さらどんな弁解も言い逃れもできないと、私は黙って頷いた。  駐車場まで移動すると、尚彦は「君も乗って行くかい? 下宿はどっちの方向かな、送ってあげよう」と結城に声を掛けた。 「いえ、御迷惑でしょうから」 「遠慮しなくてもいいよ」 「ここで失礼します。お気をつけて」  踵を返す結城にそれ以上何も言えず、私は再び尚彦の車の助手席に乗り込んだ。 「いやはや、おとなしくしていたけど、本当はハラワタ煮えくり返っていたんじゃないのか、あのカレシ」  ニヤニヤと笑ってこちらを見る男から視線を逸らし、私は「さっさと帰ろう」と促した。 「はい、女王陛下」 「大概にしろよ」

ともだちにシェアしよう!