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青いポインセチアの花言葉 3
度肝を抜かれて目を剥く私に、今度は芝が話を続けた。
「飛び降りて怪我をする方に十万円賭けろ、自分は無事な方に十万だって。この前の賭けが取り止めになったから、もっとバージョンアップさせたらしいです」
「バージョンアップって……何を考えているんだ!」
「あいつ、遺伝学に出席していなかったでしょう。どうやら授業サボッて、昼間から飲みに行ってたみたいなんスよ。傍に行ったら、すげぇ酒臭かったから。もちろん、やめろって説得したんだけど、ヘタに近づけないっていうか……」
「わかった。今度は私が行くから、キミたちは帰りたまえ」
「えっ、でも」
「みんなで行って、騒ぎ立てて刺激するのは余計まずいだろう。私一人で説得する。責任は私が取るから、さあ、早く」
顔を見合わせて躊躇する二人に念を押すと、私は急いでそちらに向かった。
非常階段は外づけになっていてエレベーターは使えないため、そちらを上がるものの、杖をついた状態がもどかしい。
いつも三階で生活しているくせに、いざ、この高さを実感すると怖くて足がすくむ。下を見ないようにしながら、ひたすら階上を目指して、ようやく屋上へ辿り着いた。
彼は囲いの部分に背中を預けたポーズでこちらを見ていた。私が到着してこの場に向かう様子などをすべて把握していたらしい。
階段を一気に上がったのでさすがに息が切れる。呼吸を整えながらゆっくりと進み、できるだけ穏やかに話しかけてみた。
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