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青いポインセチアの花言葉 8

 このままでは風邪をひくのも時間の問題である。私の部屋へ入りシャワーを勧めると、彼は素直に従った。  カーテンを引いてベッドサイドのライトを点けただけの室内で、タオルを肩に掛けて座り込んだ私はタバコに火をつけると、紫煙の行方をぼんやりと目で追った。  言葉に出さなくても伝わるなんて、それは勝手な幻想なのだ。大方の気持ちはやはり、自分の口で伝えるものだ。  常に冷静でなくては、取り乱してはいけないと平静を装い続け、気持ちを伝える行為を怠った私は若者の言葉を一時の情熱だと受け流し、軽くあしらうだけのイヤミな大人の男、そう思われて当然だった。  それでも彼は食い下がってきた。自らが大人の男を目指そうとして、慣れないタバコをくわえ、年上の女性と大人同士の恋愛を経験したかのように語った。  ともすればくじけそうになる自分を制しながら、激情にかられないように、相手と一定の距離を保てるように振舞った。それが大人のやり方だと信じていたのだろう。  だが、それらも限界に達してとうとうキレてしまい、屋上へと上った。彼をそこまで追い込んだのはこの私だ……  ユニットバスのドアの音がして彼の出てくる気配に立ち上がり、無言で擦れ違う。熱い滴を全身に浴びたあと、バスタオル一枚だけで目の前に立ってみせた。もちろんメガネもはずしてある。  所在なさそうに椅子に腰掛けていた結城は弾かれたように立ち上がると「いいの?」と掠れた声で訊いた。

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